2012/05/09

【読書】女房が宇宙を飛んだ

女房が宇宙を飛んだ
女房が宇宙を飛んだ
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向井 万起男
講談社
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向井万起男、「女房が宇宙を飛んだ」読みました。

宇宙飛行士、向井千秋の夫、「君について行こう」の続編です。
前作は宇宙に行くまででしたが、今作は宇宙に行って帰ってくるまでの話です。

つくづく、不思議な夫婦だなあと思います。
作者の、向井千秋に対する愛は非常に強く感じますが、二人が1年に会う回数は10回程度。子どももいません。

私と嫁さん、子どもの生活と比較すると、信じられないような生活です。

私も以前は、単身赴任でもいいから海外転勤したいなあなんて考えていましたが、今となっては家族のいない生活は考えられません。寂しくて死んでしまいそうです。

まあ、世の中には、いろんな夫婦のあり方があるんでしょうね。

ところで、作者は宇宙飛行士マニアです。本当にマニアといってまったく憚りない宇宙飛行士マニアです。そんな作者が一番好きな宇宙飛行士は、ジョン・ヤング

この人はどんな人かというと、ジェミニで2回、アポロで2回、スペースシャトルで2回の、計6回宇宙飛行をした結構すごい経歴を持った宇宙飛行士なんですが、例えば、アメリカ人最初の宇宙飛行、人類史上初の月面到達といったような、燦然たる記録とは違います。
宇宙飛行6回というのは、すごくはありますが、百人以上いる宇宙飛行士の中で、とびぬけた存在ではありません。

作者がなぜこの人を好きかというと、宇宙飛行士はある程度の宇宙飛行を経験すると、民間企業に転職したり、大学教授になったり、政治家になったり、宇宙飛行士以外の職業に就くことが多いそうなんです。
宇宙飛行士になるのは狭き門ですから、その難関を勝ち抜いた人は、当然、その後も経歴もよりどりミドリなわけです。

でも、ジョン・ヤングは宇宙飛行士ひとすじで、この本が書かれたのは1998年なんですが、その当時で68歳、その歳になっても、いつでも宇宙飛行に選抜されるために毎日訓練をしていました。最終的には、74歳で引退します。

宇宙飛行士は、いっときだけの夢を追うアルバイトでも、ちょっと目立つ有名人への登竜門でもなく、それ自体が価値ある職業だと体現した人なんです。

これは、非常に共感しました。
私の仕事、システムエンジニア(SE)は、ある程度の年齢になると、ライン職(課長や部長)や、プロジェクトリーダー、コンサルになるのがスキルパスになっていて、システムエンジニア自体はいっときの職業であるような風潮があります。
でも、私はシステムエンジニアっていう仕事が好きなんです。
私はずっと、私の職業はシステムエンジニアだと誇りを持って言いたい。
上級システムエンジニアとか、わざわざ「上級」とかわけのわからん言葉を付けて経験積んだSEなんだぞとか言葉で権威づけしたりせず、単なるいちSEだと誇りを持って言いたいと思っています。

まあ、そんな青臭いことを言いたくなるような、素敵な作者のよい本でした。


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